講習会

只今、京都フランス歌曲協会では、フランス歌曲の巨匠、フランソワ・ル・ル―氏の9日に渡る講習会の真っただ中です。私も、レッスンを受けたり、聴講に行ったりと、フランス歌曲の奥深い世界に浸っています。

私の受講曲はやはりラヴェルの「博物誌」にしました。言われることは大方予想していたのですが、この曲は明らかに歌ではなく朗誦だと。それも大げさに滑稽にデクラマシオンしなければならない。

私は発表会でもこのうちの「孔雀」「ほろほろ鳥」を演奏しましたが、その前にこの詩の朗読を入れて歌いました。非常に難しい曲でしたが、おもしろかったと好評でした。先生はまったく孔雀になりきっていたし、まったくホロホロ鳥だった・・・とも言われました。

でも、講習会を受けて、これではいけないのだと、反省しました。この曲は1人称で書かれたものではなく、il(彼)やelle(彼女)の3人称で書かれています。私が「孔雀」や「ホロホロ鳥」になってはいけないのです。作者ルナールが生き物の生態を観察し、それを朗誦、ナレーターしているのだと。その滑稽さを大げさに朗誦しなくてはいけないのだと。

5月25日の芸術文化センターの公演のプログラムに載せる解説文の締め切りが迫っていて、今回は出演者全員が「博物誌」に取り組み、各自が解説を書くので思案しましたが、こう記すことにしました。

 

ルナールの「博物誌」を読まれたことがあるだろうか?ルナールは、都会を嫌い、田舎に住んで、昆虫、鳥、家畜、爬虫類、その他諸々の生き物の生態を凝視、観察して「博物誌」を綴った。彼は自分を「影像(すがた)の狩人」と呼ぶ。『蝶』の項にはこんな記しがある。

「『蝶』二つ折りの恋文が、花の番地を捜してる」

なんとも、ルナールの昆虫に対する眼差しの暖かさに感嘆する。

ラヴェルはこの中から『孔雀』『こおろぎ』『白鳥』『かわせみ』『ホロホロ鳥』と5つを選び作曲した。ラヴェルは自伝の中でこう書く。「ルナールの明晰で直接的な言葉と、その奥に隠された深い詩情が心を捉え、テキストを読んでいると、僕はフランス語のデクラマシオン(朗詠法)を、知らず知らず、口にするのだった」と。ルナールは音楽にされることを嫌ったそうだが、この曲は、まさにルナールが捉えた影像の音楽による映像化である。(解説:磯島朋子)